指導初日のことは今でもよく覚えています。初日は英語と数学を1時間ずつ、知識の確認や現在のレベルを計って終わりました。すでに高校受験生は3人見たことがあったのですが、今までのどの生徒よりも基礎が抜けているのは明らかでした。「これはかなりまずい状態だな・・・」と思いながら、授業後に思い切ったプランを提案しました。「まずは中1の内容をざーっと1ヶ月でやり直そう。」
成績が良くないとは言え、授業初日に「中1からの復習」を宣告されたK君は納得のいかない様子でした。そのことをお母さんにも伝えると、やはり納得のいかない表情。受験まで半年も無い状況で、中1からの復習を提案しているのだから無理もありません。それでも、私はなんとか説得し、まず1ヶ月は中1の内容を復習する計画を受け入れてもらいました。
指導を始めて分かったのは、そこそこ難しい問題が解ける事があるかと思うとごく基本的な問題ができなかったりすることでした。要するに、ものすごくムラがありました。K君は数学をパターンで覚えていくやり方だったので、同じような問題を違う角度で問われると解けない状態だったのです。私は1ヶ月、中1用の問題集を解かせ、間違えた問題は「なぜ」間違えたのかを徹底的に分析し、解法パターンを覚えていてもきちんと理解できていない所は分かるまで説明しました。
1ヶ月が経ち、中1用の問題集とは言えほぼ完璧に解けるようになったK君からは自信すら感じられるようになりました。「中1の問題しかやってないのに学校の授業がわかるようになってきた」とK君が口にした時、このやり方が間違っていなかったと確信したものです。
おもしろいもので、問題がどんどん解けるようになり成績があがってくると、勉強嫌いの生徒でも勉強が楽しくなってくるものです。ほとんどの人は勉強が嫌いなのではなく、勉強ができないから嫌いなのです。これは今までの生徒を見ていて思ったことなのですが、K君も例に漏れず、他の科目の勉強にも俄然力が入ってきました。12月下旬までに一通りの基礎を終えて、あとは過去問を使っての演習というところまできました。
このように書くと全て順調にいったかのようですが、実際には苦労したこともあります。一番大変だったのは、K君のお母さんへの反抗でした。そういう年頃なのでこれはもう仕方ないのですが、K君の前では常にK君の味方でいるようにし、K君のいないところでお母さんには相談や報告をするようにしました。これが3人だと話にならなくなってしまうのです。お母さんから話すとなかなか言う事を聞かないので、勉強に関することはなるべく私の口から、私の意見としてお母さんの要望も伝えました。
また、K君はきちんと理解できていないのにわかったつもりになってしまう癖がありました。それが積み重なって指導当初の状態になってしまっていたので、定期的に前に習得した(はずの)問題を解いてもらうなどして、徹底的に「きちんと」理解することにこだわりました。
最後の模擬テストでは3科の偏差値は57までに上がっていました。K君は志望校のランクを上げ、見事に合格しました。幸い今までの生徒さんからは全て吉報を頂くことができています。そして毎回、自分の合格時よりも喜んでいる私がいます。